親から実家を相続したものの、「名義変更(相続登記)の手続きをそのままにしている」という方は少なくありません。
「今すぐ売る予定もないし、後でいいだろう」と考えがちですが、実は相続登記には期限が設けられており、放置すると過料の対象になったり、売却したいときにすぐ動けなくなったりするリスクがあります。
この記事では、名義変更をしないままでいるとどうなるのか、期限や罰則、放置によって生じる具体的な不利益を整理しました。今後どう対応すべきか判断する材料としてご活用ください。

「そのうちでいい」と後回しにしてしまう理由
相続登記を後回しにしてしまうのには、いくつかの共通した理由があります。まずはその背景を整理します。
「今は売る予定がないから」という先延ばし
すぐに売却や活用の予定がない場合、「名義が誰であっても今の生活に支障はない」と感じて、登記の手続きを後回しにしてしまう方は少なくありません。
実際、名義変更をしなくても、住み続けること自体はできてしまうため、緊急性を感じにくいというのが実情です。
しかし、いざ売却したい、担保に入れたいというときになって初めて「名義変更が終わっていないと何も進められない」ことに気づき、慌てて手続きを始めるケースも多く見られます。
手続きの手間や費用が分からず動けない
相続登記には戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成など、複数の書類が必要になります。何から手をつければいいのか分からず、結果として手続き自体を先延ばしにしてしまうという方も少なくありません。
費用面でも、司法書士に依頼する場合の報酬相場が分からないことが、腰が重くなる一因になっているようです。
実際には、法務局の相談窓口で無料相談を受けられる場合もあり、まず何が必要かを把握するところから始めれば、思っているほど大きな負担にはならないこともあります。
相続人同士でまだ話がまとまっていない
兄弟姉妹など複数の相続人がいる場合、誰がどの財産を相続するかという遺産分割の話し合いがまとまらず、結果として名義変更が進まないというケースもあります。
この場合、法定相続分どおりに共有名義で登記することも可能ですが、後々の売却や管理で全員の同意が必要になり、かえって手続きが複雑になることもあります。
話し合いが長引きそうな場合は、「相続人申告登記」という簡易的な制度を使って、ひとまず義務を果たしておくという選択肢もあります。
関連記事:相続でやることを期限順に一覧整理|流れと注意点をわかりやすく解説
名義変更をしないまま放置した場合に生じるリスク
名義変更を後回しにしていると、実際にどのような不利益が生じるのかを具体的に見ていきます。
売却も担保設定もできない
不動産を売却するには、その前提として名義が正しく相続人に移っていることが必要です。
名義が被相続人(亡くなった方)のままでは、そもそも売買契約や所有権移転の登記手続きを進めることができません。同様に、金融機関から融資を受ける際の担保として不動産を使うことも不可能です。
売却や活用を考え始めたタイミングで、まず相続登記から着手しなければならず、その分だけ実際の売却までの期間が長引くことになります。
相続人が増えて「数次相続」に発展するおそれ
名義変更をしないまま相続人の誰かが亡くなると、その相続人の権利がさらにその子どもたちに引き継がれる「数次相続」という状態になります。
世代を重ねるごとに相続人の数は増えていき、なかには疎遠な親族や連絡先が分からない人が含まれることもあります。
全員の同意や協力が必要になる遺産分割協議は、関係者が増えるほど難航しやすくなるため、名義変更は早めに済ませておくほど手続きの負担は小さく済みます。
空き家として放置すれば管理責任も相続人に生じる
名義変更をしていなくても、相続人には被相続人の不動産を管理する責任が生じます。
建物の老朽化や庭の手入れ不足によって近隣に迷惑をかけた場合、法律上の所有者でなくても、事実上の管理者として責任を問われる可能性があります。特に空き家として放置される期間が長くなるほど、倒壊や火災などのリスクも高まるでしょう。
名義変更と合わせて、実際に建物をどう管理・活用するのかも早めに検討しておくことが望ましいといえます。
関連記事:【相続した家をどうする?】迷ったときに整理すべき判断ポイントを解説

相続登記の期限と罰則の正確な内容
「過料」という言葉だけが先行して不安になっている方のために、期限と罰則の正確な内容を整理します。
相続を知った日から3年以内が期限
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記の申請をすることが法律で義務付けられています。
正当な理由なくこの期限までに申請をしなかった場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
「知った日」が起点となるため、相続の発生自体が古い場合でも、実際に相続したことを認識した時点から3年間の猶予があると理解しておくとよいでしょう。
過去の相続分も義務化の対象に含まれる
今回の義務化は、2024年4月以降に発生した相続だけでなく、それ以前に発生していた相続にも適用されます。
過去の相続分については、2027年3月31日までに登記を済ませればよいという経過措置が設けられています。
「昔相続した実家がそのままになっている」という場合でも対象になるため、心当たりがある方は早めに状況を確認しておくことをおすすめします。
正当な理由があれば過料は科されない
遺産分割の話し合いがまとまらない、相続人の数が非常に多く戸籍の収集に時間がかかっているなど、正当な理由があると認められる場合には、期限内に登記できなくても過料の対象にはなりません。
また、そうした事情がある場合には、氏名や住所を法務局に申し出るだけで義務を果たしたことになる「相続人申告登記」という簡易的な制度も用意されています。
この制度を使えば、遺産分割協議がまとまる前でも、ひとまず義務違反の状態を避けることができます。
関連記事:相続した土地の売却手順が分からない方へ、進め方を順番に整理して解説
「名義変更しなくても罰則はすぐに来ない」は誤解
相続登記の義務化が始まったとはいえ、「実際にはすぐに過料を科されるわけではないのでは」と考えている方もいます。
現時点では、法務局が登記の未了を把握してすぐに過料の通知を送るという運用には至っておらず、実務上は放置していても即座に不利益を被るわけではないという見方もあります。
しかし、これはあくまで現時点での運用の話であり、今後の制度運用の変化によって状況が変わる可能性は十分にあります。何より、過料の有無にかかわらず、名義変更をしていなければ売却や担保設定はできず、相続人が増えるほど手続きは複雑になっていきます。
「罰則がすぐに来ないから大丈夫」ではなく、実務上の不便さがすでに生じているという点を踏まえて、早めの対応を検討することをおすすめします。
関連記事:実家を空き家のまま放置するとどんなリスクがあるのか、まとめて整理する
まとめ
相続した家の名義変更を放置していると、期限内に手続きをしなければ10万円以下の過料の対象になる可能性があるだけでなく、売却や担保設定ができない、相続人が増えて手続きが複雑になる、管理責任が曖昧なまま空き家化するといった実務上の不利益が生じます。
相続を知った日から3年以内、過去の相続分については2027年3月31日までという期限を踏まえ、遺産分割協議がまとまっていない場合は相続人申告登記という簡易な制度を活用する方法もあります。
まずは戸籍謄本などの必要書類を確認し、法務局の相談窓口や司法書士に相談するところから始めてみてください。
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